あんなこと、こんなこと、ドイツ便り

第10話(2011年1月執筆)【サマータイムのある暮らし】

from 谷本バルタイト美枝子

中央ヨーロッパの標準時刻はグリニッジ標準時プラス1時間。
日本との時差は8時間です。
例えば日本の夕ご飯どき、ここはもうすぐお昼ごはん。こちらで深夜が近づく頃、《日の出ずる国》日本ではとっくに日付が改まっていて、人々が通勤や通学の列車に揺られています。
私の母は生涯日本を出ることがなかっただけに、この時差というものと全然うまく付き合うことができませんでした。実家に電話をすると、私がろくに何も言わないうちに通話を切ってコールバックしてくれたものですが、再びつながるや否や「そっち今何時?」がお決まりの第一声
最近と違って通話料金が高かった頃のこと。いくら向こうから掛けてくれているとはいえ、こんなやりとりに費やす時間がもったいなく思え、 『日本時間マイナス8。いつまでたっても分からない人ねぇ…。もっとまともなこと訊いてよ。』と、内心イライラするのが常でした。
でも、今にして思えば親の心子知らず。『せっかくいいお月様が出てるのに…、あなたにも見せてやりたいのに…、そっちはどうせ、まだ真っ昼間なんでしょう?』例えばそんな口惜しささえ、あの一言に込められていたこともあったのだと、後にふとしたきっかけで知りました。

サマータイム=Daylight Saving Time
サマータイムが始まると時計の針が人為的に1時間進められ、たった1時間ですが日本時間に近づきます。
標準時からのスイッチが行われるのは、毎年3月最後の週末。今年を例にとれば、今月26~27日のウィークエ ンドに時刻が操作されます。
具体的には、27日午前1時59分59秒の1秒後が2時ならず3時。
だから日曜日の朝起きて、身の 回りの標準時のままの時計が9時なら、これらをことごとく10時に改め、『あ~ぁ、寝てる間に、せっかくの週末から1時間盗られたぁ…。』と、 悔しい思いをすることになります。
その代わり嬉しいことが1つ。この日を境に、日が暮れる時刻が1時間先延ばしになり、日に日に、日照時間の長くなっていくのが 実感できます。まさにこれこそがサマータイムの意図。というのも、夏至のドイツの日の出は標準時のままなら4時10分頃で、大抵の人はまだ起きていない時刻ですが、これを1時間操作したサマータイムなら5時10分。同じく日の入りは標準時で20時55分頃のところがサマータイムで21時55分となります。こうして日照時間と通常の人々の活動時間帯をできるだけ重ねようとする試みがサマータイム。

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