あんなこと、こんなこと、ドイツ便り

第9話(2010年12月執筆)【ハンカチ並みの世界】

from 谷本バルタイト美枝子

『思わぬところで思わぬ人にばったり、日本って(或いは地球って)案外小さかったんだね。』
誰にも一つや二つ、そんな体験はあることでしょう。私もフランクフルトに住み始めた頃、仕事の昼休みに食事に出た先で、日本でお世話になった大学の先生に出会ったことがあります。またある時は、うちの前の横断歩道前、道路の向かい側 の市電の停留所に目をやれば、これまた学生時代の先輩が、ご家族といっしょに電車を待っているところ。
とはいえ、二車線道路のこっちからあっちに『西原さぁ~ん!』と大声をかけるのも恥ずかしく、もどかしい思いで青信号を待つうちに、彼らの目当ての市電が到着。 結局一言もお話できず、手を振ることさえままならぬまま、中央駅方面へと運ばれていくご一家を目だけでお見送りし ました。でも、よくよく考えてみれば、この程度のことは驚くには足りません。
ドイツ文学/語学を専門としてご活躍の先生方が、時折ドイツに見えるのは当たり前。その際、交通の要所フランクフルトに一時滞在されるのもちっとも不思議ではないからです。と、こんな風に免疫がついて、思わぬ出会いの感激に鈍感になった私も心底びっくりのエピソードが二つ。
そこで2011年第一弾のドイツレポートは、そんなお話をご紹介すべくドイツを飛び出し、スペインはカタルーニャ地方のバルセロナ、そしてイタリアはボローニャ、ローマへと皆さんをお誘いします

バルセロナで白昼堂々
イタリア北部の小さな山村に生まれた友人ローザは、幼い頃一家全員でオーストラリアに移住。 自分のルーツであるヨーロッパには、大人になってから、あえて機会を見つけて旅するようになったそうです。
ご主人の定年退職をきっかけに、二人の欧州旅行はさらに頻度を増しました。とりわけ近年は、フランスからスペインへの聖ヤコブの道を初め、巡礼の旅に夢中。3ヶ月ほどの滞在中に全工程800~1000キロメートルの道のりを徒歩で制覇、そんなパワフルな旅をもう何度も経験済みです。そして嬉しいことに、毎回つぶさな旅程を前もって知らせてきて、「都合がつけばどこかの街で会いましょう。」と誘ってくれます。
聖ヤコブの道を歩ききった彼らが、最終目的地であるスペイン北西部からイタリアのミラノへ飛ぶ途中、バルセロナで1日のトランジット。 これが、今から三年前の私たちの再会のチャンスでした。そこで私もバルセロナへの旅を計画し、そのうちの一日をローザとご主人のルイ、そして巡礼の一部に同行した息子さん夫婦と共に過ごすことにしたのです。かくして訪れたバルセロナ、めでたく再会相成って、ローザ、ルイと並んで目抜き通りを歩いていると、前方を行く息子ジョーンの素っ頓狂な声が聞こえてきます。見れば、すれ違いざまの誰かと大声を張り上げ話している様子。
おまけに肩まで抱き合い始めたので、喧嘩を売ったり売られたりでないことだけは確かですが…。

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