あんなこと、こんなこと、ドイツ便り

第2話(2010年5月執筆)【ゴミをめぐる話】

from 谷本バルタイト美枝子

「ゴミの回収車はありませんか?」初めてお客さんからこう尋ねられた時、私はとても戸惑いました。当時、勤め先のショップにはご希望の品がなかった上に、おもちゃの車を使って「ゴミの回収作業」を真似るという遊びを私自身が想像できなかったからです。でも、これは明らかに私の認識不足でした。決まった曜日、所定の場所に、特定の種類のゴミを持ち出すという、日本で一般的な回収方法と違い、私たちは各家庭用あるいは集合住宅で共同の大きなゴミ容器に、日常のゴミを捨てています。これらの容器には、普通ゴミ用、紙用、リサイクリング可能なパッケージ用、ビオ用の区別があり、それぞれ文字や絵による表記に加えて、黒、緑、黄色、茶色など、ふたや容器全体の色でも識別ができるようになっています。回収車がやってくると、オレンジ色の蛍光ライン付き安全作業衣を着た作業員の方々が車を降り、車輪の付いた容器を上手に操って車の後部に運びます。いかにもたくましい男性達です。続いて車のアームに容器が固定され、次の操作で、アームがゴミ容器をひょいと持ち上げます。かくしてガラガラゴーンの音とともにゴミが回収車の腹部に消え去った後、空になった容器は軽々と元の場所に運ばれ、車は車外の足場に颯爽とつかまり立った作業員を乗せて、次の回収地へと向かいます。

クレーン車やショベルカー、消防自動車に救急車など、働く自動車が大好きな子供たちに、これがおもしろくないはずがありません。しかもゴミの回収車は、数ある働く自動車の中で最も日常的、子どもがその活躍の場を目にするチャンスが一番多い《スター的存在》です。このことをもっと実感できたのは、二人の子どもを連れた友人夫婦とマイン川沿いの遊歩道を歩いていた時のことでした。妹を乗せたベビーカーのフレームにお兄ちゃん(当時三歳)がつかまり立っての二人乗り。それを押していた彼らの父親は、散歩のあいだじゅう、息子のゴミ回収ごっこのお相手をさせられていました。遊歩道に備え付けられたゴミ箱が回収地の目印です。ここで父親は立ち止まり、回収作業員になりすましたT君がゴミ箱の方に駆け寄って、エッチラオッチラといかにも容器を転がしてくるかのような様子で戻ってきます。二人の共同作業で容器を車体(ベビーカー)後部にセット、手回しハンドルの操作で中身を空けると(ボタン一つでできてしまったのでは味気なさ過ぎるのでしょう)T君はからっぽ容器をもとの位置に戻します。そして再びフレームにつかまり立って、お父さんの運転で次のゴミ箱を目指します。

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